仕事の記憶
設計期間: 2002年06月〜2003年04月
工事期間: 2003年05月〜2003年12月
20030703 上棟
1/100模型
兵庫県加西市で建設中の「加西の家」が7月2日上棟を迎えました。
建方風景1
この住まいは吉野杉を使った木造+一部RC造の2階建てで、木造平屋の車庫も併設された比較的大きな住まいです。

施工は住まい手と代々に渡り付き合いの有る地元の工務店にお願いしていますが、さすがに社寺仏閣まで手掛ける腕の良い大工方だけあって、かなり込み入った架構にもかかわらず全て手キザミによる仕口や継手が豪快に納まって行く様は、機械による工場プレカットが一般的になり、それに馴らされていた目には圧巻の棟上げでした。

仕上げは先日上棟した「小曽根の家」とほぼ同様ですが、この住まいならではの仕上材として、蔵元である住まい手がかつて使っていた酒樽の古材(おそらく吉野杉)を板材に挽き直してアプローチや玄関ホールの一部の壁に使ってみる予定です。
酒樽
右: 現役を退き蔵に眠る酒樽

プランニングでは、開けた周辺からの視線を適度に制御しながらも光と風を呼び込める中庭型を採用し、その中庭に面して吹抜のある家族の間を設け、玄関から家族の間そして食堂へと移り行く視線を楽しめる住まいにしています。
また、温水によるほのかに暖かい床暖房システムや深い軒を持った大きな窓からのダイレクトゲインによる暖房、吹抜から2階天井に上がった暖気を1階床面に戻す簡単なサーキュレーションシステムや雨水を溜めておける小さな池など、パッシブデザインに対する工夫も数多く取り入れた住まいです。

竣工は2003年12月中旬を予定。
なにぶん大阪からは遠方のため完成見学会を開催するかどうか未だ決めかねていますが、決まりましたら、またこのページでお知らせします。

建方風景2
左: 中庭部分の登梁
左下: 東側から水田越しの眺め
下: 夕暮れ間近 無事上棟
中央に建つのは、大阪では最近見られなくなった、切ったばかりの青竹に吹流しを取り付けた上棟の旗印。模型とは逆の北側からの眺め。
上棟
施工工務店:有限会社 ニシオカ住宅
20030828 床暖房工事
南東より見る
上棟から約1ヶ月半。
より姿が整ってきた加西の家からのレポートです。
工事の進行状況は、写真でも分かるように先週末に屋根・板金工事が終了し、外壁の左官下地となる杉バラ板張がはじまったというような所です。

左: 東側から水田越しの眺め
下記ニュースで掲載した写真と比べるとだいぶ家らしくなってきた最近の姿。
手前の稲穂もだいぶ成長していますが、やはり冷夏の影響で平年より生育が遅いそうです。

南西より見る
右: 敷地アプローチから見る
この角度から見ると北東に望む山並みの稜線と主屋根の勾配が一致するようにデザインしています。
外壁で板張りのように見える部分は左官下地の杉バラ板張りで、白く見える部分は、さらにその下地となる透湿防風防水シート。
この住まいでは、主暖房設備として温水式床暖房を採用しています。
ただ、通常の温水式床暖房では循環させる温水の温度が60度以上で床表面温度が40度近くになるため、無垢材の床板では反りや収縮が大きく現実的には使用できません。
吉野杉無垢板を使用する今回の現場でも、これをどう解決するのかが課題の一つでしたが、工務店とも協議する中で出会ったのが、富士環境システムの低温式床暖房「うらら」。
循環温水の温度を40度とし、床表面温度を25度前後とした低温式暖房システムで、杉無垢板の床材でも過度の縮みや反りをもたらさずに使用可能で、低温火傷の心配も少ない体に優しい暖房システムです。
施工中の床暖房パネル
施工風景
銅色に輝いているのが放熱パネル。循環パイプも銅製で、システム全体として環境負荷の大きいプラスチック素材の使用は極力控えた環境配慮型システムです。
パネル以外の部分に黒く見えるのは炭化コルク製の断熱材。炭化コルクは名前の通りコルクを燃結炭化しただけの環境負荷が極めて少ない自然素材の断熱材で、床暖房と合わせ今回の工事で採用しています。
実際の暖房効果や杉床材に与える影響については私たちもはじめての採用となるため、住まい手に使っていただかない事には確たることも言えませんが、様々な要因でOMソーラーなどのパッシブソーラーシステムを取り入れられない住まいでは、なかなか有用な低温暖房ではないかと考えています。

床暖房システム「うらら」:富士環境システム株式会社

20040105 竣工
年の暮れも押迫った2003年12月26日、お伝えしてきた「加西の家」が竣工し、クリスマスからは1日遅れでしたが、住まい手に「新居でのお正月」をプレゼントする事ができました。
年末の竣工ということもあって見学会は開催しませんでしたが、少しでもこの住まいの空間と特徴をお伝えできればと思い、いつもより多めに写真を掲載してみました。ご覧下さい。
外観夕景
外構工事がすべて完了したのは、26日も5時を過ぎてから・・・というわけで全体写真は夕景です。(^^;
左手前は唐松板鎧張りの車庫。

南東よりの眺め
南東側から畑越しの外観

畑と建物の間に見える盛土(築山)は基礎工事の際に生じた残土を盛ったもの。周辺からの程よい目隠しになると共に、ランドスケープデザインの要ともなっています。

玄関夕景
左・下共: 玄関へのアプローチ
外壁の主な仕上はワラスサ入り土モルタル。
アプローチから玄関内部へと続く板張りの部分が、上棟時のニュースでお伝えしていた古酒樽を板挽きして再利用した板壁です。
長年にわたり酒を吸った古材は独特の色合いと艶を持ち、思い描いていた以上に趣のある素敵な仕上材となりました。
アプローチ
土間は玉砂利洗出し仕上。周囲の下草は富貴草。
中庭から玄関を見る
左: 中庭からの玄関見返した夜景。中庭の樹はヤマボウシ。

下: 家族の間から厨房・食堂方向を見る
床・天井 杉板張
壁 生石灰クリーム塗
広々とした空間を殺さないように階段は鉄筋トラスによる軽快なデザインでしつらえました。
アプローチから水平に移ろってきた視線はこの吹抜によって一気に垂直にも展開し、大きな空間に見合った広々とした視界を与えてくれます。

家族の間
家族の間夕景
左: 子供の間から吹抜方向を見た夜景
奥の照明器具兼用の障子の裏には温度センサー付きの電動換気窓があり、夏場の熱気抜きとなるようにしています。
1階正面は厨房で、厨房から2階に居る子供の気配が感じとれるプランニングです。
厨房方向から見た家族の間
右: 厨房付近から和室へと続く縁側方向を見る
2階は子供の間へと続き、視線を遮らない大きな空間構成となっています。
子供の間
2階子供の間
現時点では13.5畳大のワンルーム空間ですが、3人のお子さんの成長に合わせて最大3つに間仕切れるようになっています。
中央に見える和紙巻きのパイプはサーキュレーションダクトで、暖房時に吹抜を通じて2階に上がってくる熱気を1階床面まで戻し、暖房効率を上げるための単純な設備です。試験運転ながら床暖房も快適で、この設備との併用により良好な温熱環境が提供できるのではないかと期待しています。
書斎
左: 2階寝室から書斎を見下ろす
書斎は2畳大の広さですが天井高は5.5m。遊び心のある空間です。
厨房
右: 厨房
今回は住まい手からの要望もあって、いつものオリジナルデザインではなくトーヨーキッチンのシステムを導入。

住まい手は28日に入居され無事新年を迎えられたようですが、ソファとダイニングテーブルは現在製作の真っ最中で、「仕事と作品」ページを飾る竣工写真の撮影はそれらが整ってからを予定しています。
庭も出来たばかりで、まだまだ土ばかりが目立つ景色ですが、春から夏へ、また1年後・2年後とその風合いを増して行くことでしょうし、後々は緑が濃くなったそんな住まいの表情もご紹介できればと考えているところです。
20040621 竣工写真撮影
水田越しの眺め
抜けるような青空、五月晴れ。

竣工後ほぼ半年を経た6月14日、加西の家の竣工写真撮影を行いました。
家具の購入待ちもあって当初から新緑の季節に撮影を、との予定は立てていたのですが、5月に入り、いざ撮影となっても、住まい手と撮影をお願いしている松村芳治氏との日程調整や予定した日の天候がことごとく悪かったりで順延が度重なり、もう梅雨明けでないとダメかなと思っていた矢先に、快晴の予報。
互いの日程調整もうまく運び、無事撮影を終えることができました。
順延順延で苦労した見返りでしょうか、この日は日の出から日の入りまで、まったく一つの雲もない快晴の空。竣工写真の撮影でこれほどまでの晴れっぱなしは初めての経験でした。
で、その記念にと、また経過報告の意味も込めて、ニュースとして掲載してみました。

左写真:
快晴の空の下、田植えを終えたばかりの水田に映える加西の家。
ポジフィルムで撮影したものをフィルムスキャナで読み込んだだけで、シャープネス以外の画像処理はしていませんが、この色ノリ。実際のところ、こんなに濃い空はありえないのですが、当日感じた印象には近い仕上がりになっています。

下写真:
赤いソファ(arflex A・SOFA)が入り、空間が引き締まった家族の間。中庭のヤマボウシも芽吹き、空間に潤いを与えています。左手は書斎。

玄関からの眺め

続きは「仕事と作品」で・・・

その後
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