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パッシブクーリング
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小曽根の家  |
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クーリングは難しい
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前章までの初稿を公開したのが2002年2月の事でしたから、早2年半あまりの月日が流れてしまいました。この間、住まい手の方々やお問合せを受けた方々から「続きはどうなってるの」という声もチラホラいただいておりました。
で、待望いただいた挙句が、いきなり「クーリングは難しい」というタイトル。「それはないだろう」という声も聞こえてきそうですが、でもやっぱりクーリング難しい。
まずは、その難しい理由から話をはじめて行きたいと思います。
パッシブクーリングを計画して行く場合、大きく「遮熱断熱」・「排熱」・「冷却」という三つの要素、手法に分けて考える必要があります。
「遮熱断熱」は室温を上げる要因となる日射その他の熱を遮ること。
「排熱」は室内で発生する熱を、より温度の低い場所(通常は外部)に排出すること。
「冷却」はなんらかの「冷源」によって室温を下げること。
これらの三つ要素のうち「遮熱断熱」や「排熱」については、「3章 緑と風と雨と」でも述べてきたように軒深い縁側空間や風を取り入れる開口部、また熱気がこもりやすい屋根裏には換気口を設けるなど、古くから民家などでも採り入れられてきた手法に見られるように、比較的容易に計画する事ができますが、問題は「冷却」です。
物や空気を暖めるには単純な話、なにかを燃やせばよい事ですし、前々章の「パッシブヒーティング」で紹介した太陽熱を利用するような場合でも、温度を上げることはさして難しい話でもありません。
でも冷却の場合にはそうは行きません。
パッシブクーリングという以上、冷蔵庫やエアコンのように大きなエネルギーを必要とするアクティブシステムに頼らずに冷却する方法を採らなければなりません。それには冷やす対象となる空気よりも温度が低い冷源を見つけてきて、それと熱のやり取りができる状態を作り出さなければなりませんが、それがなかなか難しい。
加えて「2章 気候風土を知る」で見てきたように、日本は淡水資源に恵まれた緑豊かな風土。
それは言い換えれば雨が多く比較的湿度が高い風土ということです。北日本の一部を除けば、冬の湿度は低く、夏、湿度が高いというのが特徴です。
この夏の高い湿度が「冷却」にとって大きな問題となります。
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上図は「2章 気候風土を知る」でも紹介したAMeDAS豊中のデータです。
これには 絶対湿度の月平均値もグラフ化(赤折線)されています。
絶対湿度は気温などと違い1985年でも1994年でもほぼ同じような曲線を描いていて、最も高い8月が17g/kg前後、最も低い1月が3〜4g/kgとなっている事がグラフから読み取れます。
画像をクリックすると「気候風土を知る」での大きな画像掲載部分にジャンプします。
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エアコンの例を引くまでもなく、湿度の高い空気を冷やすと結露が起こります。
結露は暖かい空気に溶け込んでいた水蒸気が、気温の低下と共に空気に溶け込めなくなって水に戻る現象ですが、この時水蒸気は潜熱(気化熱)として取り込んでいた熱を放出して液体の水になり、結露として現れてきています。
そこで、この放出された熱もまた取り除いて行かなければ、それ以上に空気を冷やす事ができなくなります。
つまり湿度が高ければ高いほど、取り除かなければならない熱も増えるわけで、イコール高温多湿の空気は冷やしにくいという事になるのです。
またコントロールされない結露はカビ発生の素ともなり、室内環境の悪化にも繋がりますから結露対策にも十分に配慮する必要が生じてきます。
話はここで唐突に変わりますが、パッシブクーリングの冷却手法で最も多くの実例が見られるクールチューブについてご紹介しましょう。
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クールチューブ概念図 −画像クリックすると拡大図が開きます− 土中温度グラフ
クールチューブは年間を通して温度が安定している地下にパイプを埋め、そこに空気を通して熱交換を行い冷却するパッシブクーリングの代表的な手法で、冷却だけではなく寒冷地では暖房時の換気の際に、外気を予熱する地熱利用のパッシブヒーティングシステムとして採用されている事例もあります。
室内の空気を循環させる場合もありますが、その場合別に換気システムが必要となるので、図のように換気をかねて外気を通す方法が一般的です。
土中温度グラフに示すように地下の温度は深さ10〜15mで年間を通してほぼ一定の温度となることが知られており、その温度はその土地の年間平均気温と同じになります。関西であれば概ね15〜16℃といったところです。
クールチューブの場合はそこまで深く掘る必要はなく、グラフの8月の線をたどれば分かるように地下3m程度でもパイプの長さや本数を十分に取れば冷却効果は得られます。
こう書くとなにか理想的なシステムのようにも聞こえますが、もちろんデメリットもあります。
土壌と熱交換して空気を冷やすわけですから、使い続けるうちに土壌の方は暖められて冷源としての効果が薄れてくるのと合せ、土中温度で開花時期などが決まる植物の根が近くを這っていたりすると、狂い咲きなどの生育異常が起こる原因にもなります。
また設置に当たっては地面を大規模に掘り返えさなければならないので、広大な敷地の場合はともかく、一般的な住宅地では掘削時の土留工事や地下水対策、地面を掘り返す事で軟弱になった地盤の補強改良工事など、予想外に手間とお金が掛かるシステムとなります。
さらに最も問題なのが結露対策。ここで話が戻ります。
砂漠のように乾燥した気候でもない日本では、それが外気を取り込む場合であろうと室内の空気を循環させる場合であろうと、パイプ内で冷やされた空気は結露を起こします。
その水滴をきれいに拭わないと、そこに空気中の雑菌が付いてカビが発生しカビ臭が室内に充満するだけでなく、アレルギーや喘息などの健康被害の心配も出てきます。
一度カビが繁殖するとエアコンのようには気軽に清掃できませんから、メンテナンスも一大作業となってしまいます。
図のような傾斜地であれば必要性は少ないですが、一般的な敷地ではパイプに勾配を設けて結露水を集めポンプで排水する設備も必要で、そのメンテナンスも欠かせません。
先に実例が多いクールチューブと書きましたが、その多くはヨーロッパやアメリカ西海岸などの乾燥した夏を持つ気候地帯での話です。日本でも最近でこそ小規模なものの実例は増えてきましたが、いまだ大々的な事例が皆無なのは、ローコストかつ有効な結露対策・カビ対策がない、という点につきます。
というわけで、高温多湿の日本での「冷却」はなかなかに難しい、となるのです。
でも、ここでいくら嘆いていても話は進みませんね。
「冷却」はエアコンなどのアクティブシステムに頼らなければならないとしても、そこに「遮熱断熱」や「排熱」といったパッシブデザインを併用して行くことで、なにも施さないよりは遥かに省エネルギーで、環境負荷軽減にもつながる住まいが実現可能です。
そこで実例を交えながら、それらの手法について順を追って紹介して行くことにしましょう。
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遮熱断熱
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直射日光を遮る。
それだけでも夏は随分と涼しく感じられるようになります。それと同時に風を呼び込むデザインを施せばなおさら冷涼感は増します。
日本の民家は古来から、どちらかといえば夏を涼しく過ごす事に主眼を置いてデザインされてきました。深い軒と発達した縁側空間。障子や襖といった自由度の高い可動仕切。高床式の床下や欄間による通風換気。蔀戸や御簾戸の設え。そして遮熱断熱素材として優れた茅葺き屋根。デザイン要素を挙げればきりがありません。
それらに学び現代の住まいに応用して行けば、おのずと夏を涼しく過ごせる住まいが実現できます。
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夏の日射を遮る深い軒
左: 岬町の家南面
バルコニーの屋根も兼ねる岬町の家の軒の出は南面西面共に約1.9m。
下: 加西の家南面とその縁側
対して加西の家の縁側の軒の出は1.2mですが、西日除けと東風を室内に呼び込むアイテムとして、西端に板張りの独立袖壁を設けています。
また窓は遮熱性能に優れたLow-Eペアガラスを嵌めた大型片引き木製サッシとして、さらに遮熱断熱性能を高めています。
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上の2軒は比較的敷地が広く建物周囲にも余裕があるため、軒を深くする事も容易でしたが、住宅密集地ではなかなかそうも行かない場合があります。
そんなときに役立つのがルーバーや格子戸。
蔀戸の応用ともいえますが、少ない占有スペースで適度に日射を和らげてくれます。
また目隠し効果や防犯機能も備わっているので、市街地にあっても内側の窓を開放して常に通風を採ることも可能になります。
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上: 富田の家 II 階段室の窓を覆う杉横格子
下: 塚本の家 バルコニー外側に設けた3枚引きの杉格子戸
これらの事例は主に開口部からの直射日光を防ぐ工夫ですが、当然のことながら屋根や壁も陽射しを受ければ熱せられ、温度は上昇して行きます。
それを和らげるアイテムとして効果的なのが茅葺き屋根です。
茅葺きは遮熱断熱材として優れた素材というだけでなく、保水力もあることから水蒸気蒸発による冷却性能もあわせ持つ、クーリングの点からは打って付けのアイテムです。
でも大きな弱点が火災に弱いこと。近年では農村部でも防火規制がかなり厳しくなり、また茅葺き仕事を支えてきた集落ごとの「結」や材料の調達場となる里の茅場もほとんど姿を消し、重要文化財級の古民家でもない限りお目にかかれない文化遺産の一つとなってしまいました。
そんな茅葺き屋根に替わる「屋根葺材」として注目すべきアイテムが、モダニズム建築を象徴するアイテムの一つであった屋上庭園、屋上緑化です。 同じ植物素材といってもこちらは生きた植物。
生きているだけに維持管理にはそれなりの手間も掛かりますが、土壌とも相まってその保水力や葉からの蒸散効果による冷却作用は茅葺き以上に秀でたものです。それになんといっても緑のある風景は心を癒し、日々の暮らしに潤いを与えてくれるアイテムともなります。
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岬町の家の屋上緑化 ピアノ室屋上
−模型写真(下)で屋根が緑色の部分−
緑化というには土の面が多い感じですが、これはローコスト化もあって竣工当初から植栽を施すのではなく、種から育てようというコンセプトで計画したため。
土壌を肥やすためにマメ科のクローバーを主に育てているところです。
ピアノ室棟はコンクリートブロック造で土の荷重に対して余力があるのと、施工面積が小さなこともあって、緑化防水工法などの特殊な工法は用いず、防水層を保護した上で左下の写真のように排水層として砕石を敷き、通常の土を盛っただけの簡単施工としています。
2007年6月追記
その後、屋上「菜園」となったこの緑化の様子はブログでもお伝えしています。併せてご覧下さい。
ブログ<勝手口> 岬町の家
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左上: 模型写真 左下: 砕石敷き施工風景 中: 工事中のピアノ室
右: 残響調整のためにブロック壁の全面にカーテンを巡らせたピアノ室
屋上緑化で一つ問題となるのが結露。そう、またもや結露です。
梅雨時や秋雨時の湿度が高く真夏ほどの日射も受けない日には、土壌や下地となるコンクリートの熱容量が大きいために夜間冷やされた土やコンクリートが日中になってもなかなか温まらず、その冷源に湿度の高い室内空気が触れることで、結露が発生する場合があります。
冬場のシングルガラス窓のような結露量にはなりませんが、でも放置しておけばカビ発生の原因ともなります。
まして、この岬町の家の場合は室内側の用途はピアノ室、カビは大敵です。
そこで、ここでは構造体のコンクリートブロックを表しとし、その多孔質の表面を生かしながら、調湿性能がある生石灰クリームで仕上げる事で結露を未然に防いでいます。
工事中のピアノ室の写真で白く見える部分が生石灰クリーム塗です。
竣工後ひと夏を経た結果は上々。温度測定などはしていませんが体感での遮熱断熱効果は高く、また結露も起こりませんでした。
屋上緑化は近年まで鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの重い構造体でのみ可能な工法で、岬町の家の事例もまたコンクリートブロック造でのものですが、地球温暖化問題がクローズアップされてからは技術開発が加速し、最近では木造屋根での施工も可能な緑化工法が開発されてきています。
まさに茅葺き屋根に替わるアイテムとして、また広くは地球温暖化抑制のためにも、住まいづくりの際には積極的に採用を検討して行くべきアイテムの一つとなっています。
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排熱
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排熱というと真っ先に屋根裏の換気がイメージされますが、それと同じように室内の空気も天井面近くの高い位置で排気するように計画すれば、効果的に室内の熱気を取り除くことができます。
>強い風や調理の際の換気などで室内の空気が大きく乱されていない限り、夏の室内の温度は天井面に近いほど高くなります。
それはエアコンを使用している時でも同様で、急速運転時などを除けば室内の温度は天井に近づくほど高くなり、また下図のように天井が高い部屋の場合には冷気の境界面がはっきりと形成されるようになります。
ですから天井が高い部屋の場合、たとえエアコン運転時であっても空気を閉ざして冷房するよりも、天井面近くからゆっくりと排熱しながら冷房を行う方が、図示のように冷気の境界面が押し上げられてかえって冷房効率は良くなり、省エネルギーにもつながります。
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小曽根の家 空調計画概念図
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排熱換気は換気扇でも良いわけですが、小曽根の家では採光を兼ねてトップサイドライト(下写真)に温度センサー付きのルーバー窓を設けています。日射遮蔽には内付け電動ブラインドを設けています。
また、キッチン(図で左側)でのガス機器使用時には上部の木製トップライト(ベルックス)からの排熱も可能なように計画しています。
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左: 岬町の家
こちらはエアコンの無い住まいなので、換気開口をより大きく確保するため、トップサイドライトは全面引違い窓として、開閉動作は梯子を登って人力で行うという方法を採用しています。
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さて、ここで厳密な意味では本題から外れてしまいますが、排熱換気の話ついでに外壁通気層についての話もしておきましょう。
木造住宅で壁に断熱層を設けた場合、よほど特殊な工法でも採用しない限り、壁内部の湿気を抜くための機能として必要不可欠な 通気層。
層の厚みを大きく取れば換気効果も大きくなるのは当たり前なのですが、外壁の荷重による地震や台風時の耐力、外壁全体の厚みが増える事で問題となる開口部との取り合いや入隅出隅での納まり、それらに関わるコストアップなど、様々な要素をバランスよく考えた上で、私たちの事務所では ワラスサ入り土モルタル塗や漆喰塗などの左官仕上の場合で25mm厚(下図)、板張りの場合で40mmから50mm厚程度としています。
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左図は私たちの事務所の標準的な外壁通気層の納まり。
通気層(外壁)の下端を基礎に被せる事で、基礎−土台間の全周に設けた換気スリットから床下空気を誘引して、床下の換気効率を上げると共に、冬、床下に必要以上に外気が吹き込み1階床が冷え込むことを防いでいます。
下中央は加西の家での外壁施工中の写真。
透湿防風防水シート(白い部分)を張った上に通気層のスペーサーとなる縦胴縁を打ち付け、左官壁の下地となる杉板(バラ板)を張っているところ。
下右は完成した加西の家外壁
玄関へと続く酒樽材再利用材(杉)の壁とワラスサ入り土モルタル仕上の外観
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世間一般では、通気層の厚みはスペーサーに使う木材の流通規格で15mm、だそうですから25mmでもかなり大きめに計画しているわけで、機能上も十分と考えてはいます。
けれども、このような消極的なスタンスではなく、もっと積極的に通気層を活用できないものかと、ここ最近考えるようになりました。
そこで一つの試みとして外壁に熱容量が低い(厚みが薄い)素材を使い、濃色系で仕上げることにより、外壁面の温度を上げ、層内の空気対流を盛んにする工夫を一部の住宅で採用しはじめています。
従来のワラスサ入り土モルタルは日射による外壁温度の上昇を抑えるような仕上げでしたから、その意味では逆方向の工夫と言えます。
層内の対流が盛んになり空気の流速が上がれば床下空気の誘引効果も増し、梅雨時でも床下や壁内部を常に乾燥した状態に保てるので、薬品に頼らなくても構造材の防腐防蟻性をより確かなものとして、構造耐用年数を延ばすこともできると考えています。
ただ、ここで誰しも外壁の温度が高くなれば室内も暑くなるのではと考えられるでしょうが、実際はそうでもありません。
確かに外壁からの輻射熱で内側の断熱材の温度は上昇しますが、その間の通気層には常に外気が流れ排熱換気が行われているので、一定温度まで上昇した後は熱の収支がバランスして、それ以上に温度は上がらなくなります。
実際、この黒壁を試みた岬町の家は、住まい手の要望からエアコンの無い住まいとなっていますが、それでも今年の猛暑は特に難も無く過ごせたとのことでした。
もちろん暑がり寒がりは人によって異なりますから、この話だけで標準仕様化しようとは思っていませんが、機会があれば計測調査もしたいと考えている試みの一つです。
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上: 岬町の家外壁 塗装ガルバリウム鋼板波板張
下: 富田の家 II 外壁 大判サイディング張 ウレタン塗装
話がクーリングからずれたついでに、壁と排熱換気というテーマに関するお話をもう一つ。
下の写真は加西の家の車庫棟の外壁です。
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左: 外部からの壁見上げ 右: 車庫内部
25度ほど倒した唐松板を隙間を開けて張ったもので、私たちの事務所ではヨロイ張と名付けました。
車庫にこもる排気ガスやオイル臭、そして夏場の熱気を窓や換気扇を設けずにシンプルに換気排熱しようと考えた結果のディテールで、意図通り効率良く換気できています。
でも、それ以上に素晴らしいのがその空間。外観や内部の光が予想以上に美しいというか、なにか荘厳なイメージさえ与えてくれる空間となりました。
車庫のデザインのみに留めておくのも惜しいので、いま、これを応用して建築の外観などに取り入れられないかと考えているところです。住宅建築の枠の中では難しいかもしれませんが、機能と空間がマッチするような使用用途と出会う機会があれば、もう少し突き詰めてみたいと思うアイテムの一つです。
さて、排熱換気というコンセプトは同じながら、どんどんパッシブクーリングの話からは逸脱してきてしまいましたが、話を戻して、次はいよいよ「冷却」について。
話はここでのクールチューブに戻ります。
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冷却
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高温多湿の空気を冷却するかぎり回避しようがない結露関連の問題は、ここでは一旦横において話を進めることにします。
年間を通して安定な地下の低温度状態は、地球上ならどこでも利用できるものなので、その意味では太陽エネルギーと同じ理想的なエネルギー(夏に限れば冷源)です。
ただ大きく異なるのは太陽エネルギーが不変に降り注ぐエネルギーであるのに対して、地下の低温度状態というのは熱交換によってその安定状態が崩れて行く有限のエネルギーであるという点で、その話は前述の通りです。
また、これも既に書いたように住宅全体の冷却をクールチューブだけで賄おうとすると大がかりな掘削工事が必要となり、コストパフォーマンスを考えると一般的には勧めにくいシステムです。
そこで井戸を利用すれば比較的簡単に施工できるのでは、と以前から考えていました。
既に日本では、井戸はどこにでもあるものではなくなりましたから、どこの場所でもできるという話にはなりませんが、都市近郊でも古くから集落となっていた住宅地では、いまでも古井戸などが残っていたりします。
そのような使われなくなった井戸を利用して、そこに外気を通して冷やす工夫を施せば、改めて大がかりな掘削工事をする必要もありませんし、既に飲料水としては使えなくとも庭の水撒き程度に少量でも使っていさえすれば地下水が循環更新されるので、通した外気によって地下の温度が上昇してしまうような心配もなくなるのでは、と考えていました。
これはオリジナルの発想ではなく、記憶は曖昧なのですが、なにかの本で見た井戸にダクトを突っ込んでいるような説明抜きの写真が印象に残っていて、そこから自分なりの勝手な解釈でイメージした考えです。
そんな折、1998年、まだ私が工務店に勤めていた時の話ですが、敷地に井戸があるという願ってもない住まい手が現れました。
場所は夏暑い南大阪、数年前から井戸の水質が悪くなり飲めなくなってしまったが、庭の水撒きや洗濯、水洗トイレには使いたいとの事で、まさにうってつけの好条件。
ぜひパッシブクーリングを!とお勧めし、実際、果たして効果があるかどうかは出たとこ勝負、すぐにカビが繁殖して使えなくなるかもしれないなどなど、デメリットについても承諾いただいた上で実現したのが、これから紹介する「スイカ式冷房」です。
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スイカ式冷房
名前の由来は、昔は井戸でよくスイカを冷やしていた事に掛けて、外気を井戸に垂下して冷やすという洒落から。
井戸の中に予めU字型に加工したダクトを挿入し、そこに外気を通す事で井戸水との熱交換を行わせようというのが狙いで、外気導入による換気兼用のクーリング手法です。
ただ対象空間が24畳前後と広いため、エアコンとの併用を前提とした補助冷房換気システムという位置づけで計画しています。
図中の説明を補うと、外気取入口から井戸までの距離は約3m、井戸から室内吹出口までは約7mとなっていて、共に地面から50cmの深さに導入ダクトを埋設しています。
またU字ダクトの中には結露水の排水用パイプとカビが発生した場合に備え脱臭フィルターを仕込みました。
ダクト径はU字ダクトが150mm、導入管が100mmで、共に塩ビ管(VP)を使用。室内部分には断熱材を巻き、外気取入口は日射の影響を受けないよう杉板で囲ってあります。
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スイカ式冷房システム図
システム設計及び実測にあたっては、当時OMソーラー協会技術開発チームに所属されていた何江氏、藤内崇氏の協力を得ました。
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左: U字ダクトが挿入された井戸内部プランの都合で井戸は室内床下にある
右: データロガーとパソコンによる実測風景この左手上に室内吹出口がある
井戸水の中に空気と通すという試みは知る限り実例のないものでしたので、効果や問題点を調べるために、竣工から引越しまで若干日数があるという機会を利用して延べ18日間の実測調査を行いました。
<期間:1998/7/29〜8/4・8/8〜8/19>
ここではそのうち8月1日から3日のデータをグラフ化したものを紹介します。
入居前の無人状態ですから、実生活上での調査ではなく、システムの基本性能をチェックしたデータとして見てください。
図をクリックするとグラフと解説ページが別ウインドウで開きます。
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計画では24時間連続運転を想定しましたから実測もそれに沿って行われました。
外気取入口と吹出口の温度差は最大12.9℃(8/3/12:30,13:00)で、3日間の日中平均(7:00〜18:50)温度差は約9.6℃、夜間平均(19:00〜6:50)温度差は約3.8℃という結果となり、かなりの冷却効果が得られました。
この間、冷源となっている井戸水の温度は降雨時の温度変化を別にすれば、ほぼ一定の状態を保ち、外気との熱交換が行なわれても地下水温は変化しない事も確かめられました。
また温度だけでなく湿度変化(解説ウインドウ参照)も大きく、外気取込口の相対湿度は3日間平均で約70%、吹出口での平均は約98%となり、グラフにはしていませんが外気取入口と吹出口の絶対湿度差の3日間平均は約6g/kg(DA)となりました。湿度の差は実感がわかないかもしれませんが、この6g/kg(DA)の差を冒頭のAMeDAS豊中のデータに当てはめてみると、8月の湿度が5月下旬や10月上旬のさわやかな気候の頃の湿度まで下がったことになり、そう考えると大きな変化だとイメージできると思います。
ただ、これだけ湿度が下がると結露も凄く、1日で約10リットルの結露水が発生する結果となりました。
このように温度差や湿度差を見ていると、よく冷えているというデータは得られましたが、風量が100m³/h(実測値)と小さいため、冷房能力(全熱交換量)を計算すると8月2日の平均値で約340kcal/h(max 421kcal/h−min 248kcal/h)。
6畳用のエアコンの冷房能力が定格で1,900kcal/h(2.2kw)前後ですから、それと比較すればいかに小さな能力であるかが分かってもらえると思います。
この結果には実は失敗談があって、当初の設計風量は300m³/h。
なので、施工に当たっては余裕を見て設計風量486m³/hの片吸込形シロッコファンを取り付けたのですが、導入ダクトの曲がり部分が多く、また脱臭フィルターの影響によるものか空気抵抗が予測以上に大きく、実際に風量を測定した結果は100m³/h。設計風量の1/3にしかならないという困った結果となってしまいました。
風量が3倍になったからといって単純にスイカ式冷房の能力が3倍になるわけではなく、また仮に3倍になっていたとしても、その能力は6畳用エアコンの半分強にしかならないわけで、このシステム単体での冷房は難しいという点に変わりはないといえます。
実測後、より風量の大きなファンへの交換も考えたのですが、ファン騒音の問題もあり、住まい手もこのシステムだけで冷房しようとは考えてはおらず風量が小さくても構わないという事でしたので、そのままでの入居という事になりました。
入居後にいただいた住まい手の感想は「まあ吹出口の前に立てばなんとなく涼しいかな」というようなところ。
絶対湿度は下がっていても吹出空気の相対湿度は100%に近いため、吹出空気が直接当たると不快に感じるかな、とも懸念していたのですが、吹出口を天井近くに設けた事と対象空間が広かった事もあってか、住まい手からは「それは感じない」とのお話でした。
当初の予定では、入居1・2年後の再測定なども考えていたのですが、結露水排水ポンプが幾度か壊れたり、使っているうちにやはりカビ臭が出てきたりもして、その後あまり使われなくなり、私が翌年工務店を退社した事もあって実測計画は残念ながら断ち切れとなってしまいました。
このような機会を与えていただいた住まい手に感謝の念はつきませんが、振り返ってみるに通常の地中埋設型のクールチューブよりは工事規模もコストも削減できたとはいえ、その冷房能力と設置コストのバランスを考えるとかなり高価なシステムです。
この試験的な試みでの工事費は住まい手への感謝もあって格安工事費でしたので参考にはなりませんが、現時点で仮に同じシステムを施工するとなると、やはり25万円から30万円程度の費用は必要なのではないか思います。
エアコンと熱交換式換気扇を設置してもおつりがくる値段です。
そこを無理しても実行する事が大切なのかもしれませんが、現実問題として結露対策に抜本的な解決方法がない現時点では、あまりにもコストパフォーマンスが悪すぎ、少なくとも日本のような高温多湿な夏を持つ風土の中で住宅規模の建築への汎用性は乏しいと結論付けざるをえませんでした。
そう、クーリングは難しい。
パッシブヒーティングの章で紹介したOMソーラーシステムの一部にも、夏の夜間に屋根面で発生する放射冷却現象を利用して外気を冷やし、それを室内に取り込んで冷却換気を行う「冷風取入」というモードを備えたシステムもありますが、空気が澄んでいて夜間比較的湿度が低くなるような地域を別にすれば、それ単独での冷却効果はあまり期待できるものではない、というのが何軒か建築してみての感想です。
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ただ庭先や軒先への夏の打ち水のようなことも含め、それら一つ一つの効果は小さくとも、それを集め積み重ねて実践して行くことこそが、パッシブクーリングという手法の中で最も大切な点であり、私自身、今後もそれを踏まえて取り組んで行くつもりです。
ここまで再三述べてきたように、アクティブな機械装置に基づかないクーリングは極めて難しいものです。
だからこそ、「遮熱断熱」や「排熱」のアイテムを駆使し幾重にも施すことで、室温上昇を可能な限り抑えられるようなパッシブデザインの住まいを考え、たとえ「冷却」に関してはエアコンに依存しようとも、そのエネルギー消費を抑えて行く努力が大切、と考えています。
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