終りなき最終章
終りなき最終章
 
 
京都・清水寺にて 夕景
地球シミュレータ
ここまで、様々なパッシブデザインについて述べてきました。
なかには日本の気候風土ではなかなか期待したような効果が得られない「パッシブ・クーリング」のようなテーマもありますが、要は、何かを作ったり制御しようとしたりする時に、まずはできるだけ自然の持つエネルギーを利用できないかと考えてみたり、先人の知恵を応用できないかと考える事が大切なのです。

地球温暖化は、たとえ京都議定書に定められた温室効果ガス抑制目標を各国が達成したとしても、今後確実に進んで行きます。

下図は2004年9月に環境省が発表した<地球シミュレータによる最新の地球温暖化予測計算が完了>という報告書から抜粋転載した2100年までの気温変化を示したグラフです。
この予測によると今後温暖化ガス濃度がIPCCシナリオ<A1B>に沿って増加した場合、2071〜2100年の30年間の日本の夏の日平均気温は4.2℃上昇し、日最高気温は4.4℃上昇するとの結果が出ています。
米国が京都議定書を批准せず、中国などの発展途上国が規制対象外となっている現状では、IPCCシナリオ<A1B>が描く温室効果ガスの推移さえ楽観的といわざるをえず、実際にはもっと急速に温暖化が進む可能性も否定できませんし、このシミュレーションでは都市化の影響、ヒートアイランド現象による温度上昇は考慮されておらず、都市部ではこの予測以上に気温が上昇して行くと考えられます。

地球全域での年平均気温
上図 計算された年平均地表気温上昇量の地理分布。シナリオ「A1B」の2071〜2100年の平均気温から、1971〜2000年の平均気温を引いたもの。(原文のまま)
下図 計算された、1900年から2100年までの日本の領域で平均した夏季(6・7・8月)の平均気温(2001年以降についてはシナリオ「A1B」を用いた結果)。黒線が年々の値で、赤線が10年移動平均を施したもの。2071年〜2100年の年々のゆらぎの標準偏差は0.52で(黄色)、1971年〜2000年の標準偏差(水色)0.54と比較して大きくない。都市化の影響は考慮されていない。(原文のまま)
環境省<地球シミュレータによる最新の地球温暖化予測計算が完了>より抜粋転載 © 環境省
日本での夏季平均気温
私に身近な大阪を例にとれば、1971年〜2000年の8月の日平均気温は28.4℃、同平均最高気温は33.0℃、同平均最低気温は25.1℃。最低気温以外はいずれも沖縄県那覇市を上回り、いまでも「もうええわい」というくらいの暑さですが、これにシミュレーション結果を足し合わせるとどうなるでしょう。
単純に足しても8月の日平均気温は32.6℃、平均最高気温は37.4℃。
ヒートアイランド現象による温度上昇についての統計的予測データはまだまだ不十分ですが、いまのところ周辺地域+1.5℃前後という観測結果があるので、これを採って単純に加えると、大阪中心部の気温は、それぞれ34.1℃、38.9℃という予測が立ちます。
平均最高気温が39℃!
現在、平均最高気温と最高気温の極地の差は5℃前後ですが、これもそのまま当てはめるとすると、100年後の大阪の8月は、最高気温が44℃前後になる日もしばしばという結果が予測できるのです。
砂漠のように湿度が低く空気の熱容量が小さい地域での44℃ではなく、湿度が高いモンスーン気候での44℃。しかも日差しのない日陰での44℃。
そよそよと吹く涼しげな風の温度が44℃。
人間の人体を構成する蛋白質は42℃を超えると固まりだします。

わかりやすく夏の気温を例に挙げましたが、地球温暖化による変動はそれだけにとどまらず、海面上昇・豪雨の頻発や台風の強大化・砂漠の拡大・植生変化、それに人口増加も合わさっての食糧危機などなど、予測さえできない問題も数多く抱えています。

さて、これを読んだ皆さんはどう思われますか。
「おれ(わたし)一人がなにをしたって無駄やわ。」
「そのうちどこぞの誰かがなんとかしてくれるんとちゃうか。」
「そんなもん環境税とか言っとる政府が考える事で、まかしといたらええねん。」・・・

私は、たとえ温暖化抑制の効果が小さくとも何かができる機会であるのなら、その機会を活かしたい。

住宅にしろ公共建築にしろ何にしろ、そこに作られる空間はより快適なものでありたい。
でも、その空間が置かれる外の世界=環境が既に快適なものであるなら、その努力は少なくて済むのです。根がマナケモノの私にとっては、その方が遥かに楽と思えます。
そして、そんな楽な世界を次の世代にも残し、与えて行きたい。
春夏秋冬、四季が移ろい、水澄み緑豊かな日本の風土をこのままに。
それを願うだけでなく、常に自ら動いて行きたいと思っています。

みなさんはどうですか。・・・まずは「考え方をパッシブに」。
傍にある自然の声に耳を傾けてみませんか。その悲鳴が耳をつんざく前に。

終りなき最終章
パッシブデザインはこの最終章をもって一応の完結です。
でも、終りはありません。
今後の新しい試みや環境問題についての様々な情報は、ブログを使って随時紹介して行きます。みなさんが住宅を建てようとする時に少しでも役立つ情報が提供できていれば、と思っています。
ヤマボウシ